書道で「筆の洗い方」で失敗した経験があります。
穂先が割れてきて、思うように字が書けない。先生に見ていただいたら「先が割れているから書きにくいのよ」と言われました。原因は洗い方でした。筆を買い替えたとき、先生が筆の洗い方を一から教えてくださいました。
小さい頃から習字を習っているのに、先生から筆の洗い方をきちんと教えていただいたのはそのときが久しぶりでした。知らないうちに変な癖がついていたのだと思います。
筆の手入れは「道具の管理」ではなく、上達に直結しています。洗い方を間違えると、どれだけ練習しても思い通りの線が出せなくなります。
なぜ穂先が割れるのか
筆には、職人が硬さの違う毛を組み合わせ、根元を強く締め付けて固定することで、毛先が自然に中央に集まろうとする力が込められています。これが「整鋒力(せいほうりょく)」です。
洗い方が不十分だと、墨が穂先の根元で固まります。この墨の塊がこの整鋒力を外から妨害して、穂先が割れたり毛先が不揃いになったりします。私が経験したのがまさにこれでした。
根元に墨が残った状態で書き続けると、筆圧をかけても線に墨の潤いや弾力が出ず、力強い線が書けなくなります。「練習しているのに上達しない」と感じる原因の一つが、実は筆の状態にあることがあります。
大筆の洗い方
大筆は根元までしっかり墨が入っているため、丁寧に洗い流す必要があります。
水またはぬるま湯(30〜40℃)で洗います。筆を回転させながら、指で根元をグッグッと優しく揉み、毛先に向かって墨を絞り出します。根元を揉む理由は、差し込み部分に墨がたまるのを防ぐためです。水は大量に出さず、少量で墨が透明になるまで根気強く続けます。途中で諦めずに続けることが大切です。
小筆の洗い方
小筆は洗面所では洗いません。洗い方が大筆と根本的に違います。
まず、筆についた墨を半紙で丁寧に拭き取ります。次に、水を1円玉大ほど水差しから半紙に出し、その水を穂先につけてから再度半紙で優しく拭き取ります。これを墨が薄くなるまで繰り返します。完全に墨を抜こうとすると穂先を傷める原因になるので、ある程度で割り切ることも大切です。
洗うときの注意点
洗剤は絶対に使いません。洗剤が毛の油分を奪い、弾力やしなやかさを損なうためです。洗い終わったら穂先の形を整えて、陰干しで完全に乾燥させます。直射日光は毛や軸を傷める原因になります。
筆の手入れは、練習と同じくらい大切
先生から洗い方を教わったとき、「こんなに違うのか」と思いました。それまで自己流でやっていた洗い方が、知らないうちに筆を傷めていたのです。
書道歴35年でも、基本に戻ることで気づくことがあります。筆の手入れを丁寧にするようになってから、穂先が安定して、練習の手応えが変わりました。道具を大切にすることが、上達への近道だと改めて感じています。

