「昇進したくない。でも、65歳まで食べていけるか不安」
30代・40代のITエンジニアと話すと、この本音をよく聞きます。私自身、SES・派遣エンジニアとして21年以上、さまざまな現場を渡り歩いてきました。
正社員と違い、SES・派遣には「会社の中で第一人者になる」という戦略は使いにくい。常駐先が変わるたびにゼロからのスタートになるからです。
でも、だからこそ見えてきたものがあります。SES・派遣だからこそ使える「えらくならずに稼ぐ」戦略を、正直にお伝えします。
SES・派遣エンジニアの強みは「どこでも使えるスキルの幅」
正社員エンジニアが「特定の社内システムの第一人者」を目指す戦略を取れるのに対し、SES・派遣エンジニアは現場が変わるたびにその戦略がリセットされます。
しかし、この「現場が変わる」という経験こそが、SES・派遣エンジニア最大の強みに変わります。
21年でさまざまな現場を経験してきて気づいたのは、「どこに行っても通用するスキルの幅」が市場価値を決めるということです。特定の会社・システムに依存しない技術力は、正社員より却って身につきやすい環境です。
SES・派遣エンジニアが「65歳まで稼ぐ」3つの設計
① 「どの現場でも通用するスキル」を意識的に積む
SES・派遣の強みを活かすには、「次の現場でも使えるスキル」を意識して積むことが重要です。
- Linux・ネットワークの基礎——業種・規模を問わず必要とされる
- クラウド(AWS/GCP/Azure)——現場を選ばず需要が急拡大している
- セキュリティ対応——どの会社でも避けられない課題
- 監視・自動化スクリプト——現場が変わっても「できる人」として重宝される
私自身、さくらインターネットのクラウドを練習場に使いながら最新OSへの対応力を維持し続けています。現場が変わっても「手の感覚」を鈍らせないための習慣です。
② 現場の「実績」を自分の資産として蓄積する
SES・派遣エンジニアが陥りがちな落とし穴は、「現場が変わったら過去の経験が消える」という感覚です。しかし、実績は正しく言語化すれば確実に資産になります。
- 現場ごとに「何をやったか」ではなく「何を改善したか・何を解決したか」を記録する
- 数字で表せるものは数字にする(「問い合わせ対応を2割削減」「障害検知を30分短縮」など)
- 職務経歴書を現場が変わるたびに更新する習慣をつける
この「実績の言語化」は、次の現場での交渉にも、将来的なフリーランス転向にも直結します。
③ 給与を上げるには、会社の仕組みを正しく理解する
「単価を自分で交渉できる」というのは、SES・派遣の実態とは少し違います。正確には、客先との契約単価を交渉するのは自社(SES会社)であり、エンジニア自身の給与は自社の給与テーブルに従って決まります。
ですから、給与を上げたいなら、まず自社に「何をすれば給与が上がるか」を勇気をもって確認してみることです。会社によって答えは違います。
SESでよくある給与アップのパターン:
- 自分の下に他社エンジニアを入れる——管理的な役割を担うことで給与が上がるケースがある
- 会社が取れる案件に合ったスキルを身につける——クラウドやセキュリティが重要なのは確かだが、自社のビジネスモデルと合っているかどうかを先に確認する
- 社内の評価基準を把握する——技術力だけでなく、後輩育成や現場管理の実績が評価される会社も多い
「需要の高いスキルを取れば給与が上がる」と独断で動くより、会社に直接聞く方が確実で早いのがSES・派遣の現実です。
「65歳まで稼ぐ」現実的な設計例
本業(SES・派遣):需要の高い現場に入り、自社の評価基準に沿って給与を維持・向上させる
スキル維持:練習環境(さくらのクラウド等)で最新技術に触れ続ける
実績の蓄積:現場ごとに職務経歴書を更新し、言語化された実績を積み上げる
将来の選択肢:フリーランス転向・技術講師・情報発信——50代になったときの選択肢を今から広げておく
給与の安定維持 + 将来の選択肢の確保
昇進競争に消耗せず、「どこでも使える人材」として長く稼ぎ続ける。
SES・派遣エンジニアが特に注意すること
副業は契約内容を必ず確認する
SES・派遣契約には副業禁止となっているケースがあります。副業を考える前に、必ず就業規則を確認してください。
エージェント経由の案件は自分でしっかり見極める
将来フリーランスを考える際、営業が苦手だからとエージェントに任せきりにするのは注意が必要です。エージェントが持っている案件は、仕事の内容や労働環境が厳しいものも少なくありません。「こんな案件で働くのか」と感じた経験が私自身にもあります。エージェントはあくまで手段の一つ。案件の内容・単価・環境を自分でしっかり見極める目を持つことが必要です。
待機期間(アサインなし期間)への備え
SES・派遣では、現場と現場の間に「待機期間」が発生することがあります。案件が決まらない間も給与が支払われるかどうかは会社によって異なり、無給や減給になるケースもあります。
待機期間を乗り越えるために、あらかじめ以下を確認・準備しておくことが重要です。
- 待機中の給与保障がどうなるか、雇用契約を事前に確認する
- 3〜6ヶ月分の生活費を貯蓄しておく
- 待機期間をスキルアップや資格取得の時間に充てる
「待機期間は空白ではなく、次の現場に向けた準備期間」と捉えることが、長く稼ぎ続けるための心構えです。
年齢による市場価値の変化を直視する
正直に言います。SES・派遣市場において、50代・60代になると入れる現場の選択肢は狭まります。「需要の高いスキル」を持ち続けることと、早めにフリーランスや講師という選択肢を準備しておくことが重要です。
55歳を過ぎてから準備するのでは遅いケースが多い。40代のうちから次の選択肢を考え始めることをおすすめします。
まとめ:SES・派遣だからこそできる「えらくならない戦略」
- 「どこでも通用するスキルの幅」を意識的に積む——特定の現場依存を避ける
- 現場ごとの実績を言語化して蓄積する——将来の転向・交渉に備える
- 給与アップの方法は会社に確認する——自社の給与テーブルと評価基準を把握する
- 40代のうちから将来の選択肢(フリーランス・講師・情報発信)を準備し始める
「えらくならずに稼ぐ」は、SES・派遣エンジニアにとってむしろ現実的な戦略です。昇進という選択肢がない分、自分の市場価値を自分で管理する意識が自然と身につく働き方だからです。
