ITインフラの現場に21年いると、技術の問題より「人」の問題の方が難しいと感じる場面が増えてきます。
今日は、30代以上のITエンジニアに特に届けたい話を2つします。
一つは「身分より誠実さ」の話。もう一つは「武器がなくても責任を持つ」という話です。
どちらも、現場で積み上げてきた経験でしか語れないことです。
1. 技術者は「身分」で仕事をしていない
数年前、かつての現場に十数年ぶりに訪れたことがあります。昔は怒号が飛び交い、派遣や外注というだけで露骨に差別が存在していた現場でした。
それが驚くほど穏やかな現場に変わっていました。時代が変わり、教育が浸透し、環境は確かによくなった。そのことは素直に嬉しかった。
「私、派遣なので」という言葉が持つ意味
でも、そんな穏やかな現場で、ある光景を目にしました。他社の若い女性技術者が、常駐先の社員に向かって「私、派遣なので」と言っていたのです。
思わず、彼女にこう言いました。
| 「自分から派遣だなんて言わないで。仕事がしにくくなる」 |
叱るつもりはありませんでした。でも、その言葉が出た瞬間、どうしても黙っていられなかった。
「派遣なので」という一言には、無意識のうちに「だから私の責任は限定的です」「だから多くは期待しないでください」というメッセージが乗ることがあります。自ら壁を作り、責任を限定しようとする言葉です。
しかし、現場は身分で動いていません。技術への誠実さと、プロとしてのプライドで動いています。
怒号の中でも「プライド」が自分を守ってくれた
私が若かった頃、「パワハラ」という言葉はありませんでした。外注というだけで「なぜお前のためにパソコンを運ばなきゃいけないんだ」と言われ、お客様から「どうせお前、外注なんだろう?」と言われることもありました。
それでも誠意を持って現場に向き合い続けたのは、身分のためではなく、技術者としてのプライドがあったからです。
「ここは仕事をしに来るところです」——その一線を守り続けることが、自分を守ることでもありました。
| 💡 30代以上のエンジニアへ:身分や雇用形態は、あなたの技術の価値を決めません。現場での誠実な仕事が、長期的な信頼を作ります。自分から壁を作る言葉を使わないことは、自分自身へのリスペクトでもあります。 |
2. 武器がなくても、責任を持つのがプロフェッショナル
技術者として働いていると、「責任だけ負わされて、解決するための情報や権限は与えられない」という状況に直面することがあります。
私が現在関わっているインフラ業務でも、そういう構造的な矛盾があります。
「責任は負わされるのに、武器は与えられない」という現実
ソフトウェアの仕様やアルゴリズムの詳細を求めることができない——そういう制約の中で、システムの問題を解決しなければならない場面があります。例えば、アメリカ企業のソフトウェアには、契約や法的なルールによって開示できない情報があります。
現場の感覚としては、「解決するための武器(情報)は与えられないのに、責任だけは取れ」という矛盾した戦いです。
最終的な法的責任は上層部が負うとしても、現場で動かしている私たちが、プロとして責任感を持って仕事をするのは当たり前のことです。
それでも「経験と誠実さ」で答えを出す
仕様が見えない。情報が制限されている。それでも、私たちは目の前の問題を解決しなければなりません。
そのときに頼れるのは、積み上げてきた経験と、誠実に問題と向き合う姿勢だけです。
「マニュアルをなぞるだけならAIでいい。責任を負いたくないなら技術者を名乗らなければいい」
この言葉は、自分自身への問いかけでもあります。21年間、その問いに答え続けながら、私は今日も現場に向き合っています。
| 💡 30代以上のエンジニアへ:情報制限や権限の壁に直面したとき、「武器がないからできない」で終わらせるのは簡単です。でも、その制約の中でも答えを出そうとする姿勢が、長いキャリアの中で信頼に変わっていきます。 制約を嘆くより、「今持っているもので何ができるか」を考えること。それが、30代以上のエンジニアに求められるプロフェッショナリズムだと思っています。 |
まとめ:現場を守るのは「誠実さ」と「責任感」
2つの話を通じて伝えたかったことは、シンプルです。
身分や肩書きで自分を守ろうとしても、現場では通用しません。技術への誠実さと、プロとしての責任感が、長いキャリアを支えてくれます。
「武器がない」「情報がない」「権限がない」——そういう制約の中でも、経験と誠実さで答えを出し続けてきた人間が、現場で本当の意味での信頼を得られると信じています。
明日も届くであろう難しい問い合わせに、私なりの誠意を込めて向き合います。あなたも、ぜひ。
