先日、お客様の環境でトラブルがありました。実行していた800Gの巨大なジョブが、強制終了されていたのです。
Linuxのログを確認した瞬間、原因はすぐにわかりました。ユーザーに対するリソース制限の設定忘れ。800Gという膨大なデータを処理しようとしたのに、その「器」の準備ができていなかったのです。
墨を磨らずに筆を持つのと、同じことだった
書道では、書き始める前に墨を磨ります。これは単なる準備ではなく、気持ちを整え、これから向き合う一枚の紙に集中するための「儀式」です。
墨を磨らずに筆を持っても、何も書けません。道具だけ揃っていても、肝心の「墨」がなければ、筆は紙の上を滑るだけです。
リソース制限の設定忘れも、まったく同じ構造です。サーバーを立ち上げ、ジョブを投入した——でも、肝心の「制限」という器の準備ができていなかった。800Gものデータが流れ込んで、あっという間に制限に引っかかり、ジョブは強制終了されました。
なぜ、慣れているものほど確認を忘れるのか
書道で墨を磨るのを忘れることは、まずありません。それが「書く前にやること」として染みついているからです。
でも、サーバー設定はどうでしょう。毎回同じ手順を踏んでいると、「いつもどおりのはず」という思い込みが生まれます。特に、普段は問題が起きないときほど、確認が甘くなります。今回のリソース制限の設定も、「新しい環境ではデフォルトが違う」という点を見落としていました。
慣れることは大切です。でも、慣れが「確認をしない理由」になってしまうのは危険です。
書道の「指差し確認」をサーバー設定にも
書道を教室で始めた頃、先生に言われた言葉があります。「書く前に、道具を一つずつ確認しなさい。筆、墨、硯、半紙、下敷き、文鎮。揃ってから座りなさい。」
今でもこの習慣は続いています。そして、この「指差し確認」をサーバー作業にも取り入れるようにしました。
- リソース制限は適切か?
- ユーザーごとのQuotaは設定済みか?
- ログの書き出し先に十分な容量があるか?
- この環境は新規構築か、それとも既存の設定を引き継いでいるか?
ジョブを投げる前に、この4点を声に出して確認するだけで、今回のようなトラブルはかなり防げます。
失敗は「次の準備」のために使う
書道で一枚書き損じたとき、その紙を丸めて捨てるだけでは何も残りません。どこで筆が乱れたか、どこで力が入りすぎたかを見て、次の一枚に活かす。それが上達への道です。
800Gのジョブが消えた日、私が得たのは「新しい環境ではリソース制限を必ず確認する」というチェック項目でした。損失は痛かったですが、次から同じミスは起きていません。
準備を怠らないこと。確認を習慣にすること。それは書道もインフラエンジニアリングも、変わりません。
