子供が書道をやめたくないと言ったら。教室で見た親子の答え

「塾が忙しくなるから、そろそろ書道はやめようか?」

お子さんにそう提案したら、「やめたくない」と強く返されて戸惑っている親御さんへ。実は書道教室では、これはよく見かける光景です。私は書道教室に35年通っていますが、その間に何度も「塾と書道の板挟み」になる子を見てきました。

今日は、その中でも印象に残っている実際の出来事と、そのとき教室の先生が示した答えをお話しします。「やめさせるべきか、続けさせるべきか」で迷っている親御さんのヒントになるはずです。

教室で実際にあった話:「お母さんが、やめなさいって」

ある高校生の女の子が、先生にこう切り出しました。「お母さんに、習字をやめるように言われました」。

先生が理由を聞くと、「塾に行くことになったので、習字に行く時間は勉強してほしいと言われた」とのこと。よくある話です。ここで先生が「じゃあ仕方ないね」と言えば、それで終わりでした。

でも、先生の答えは違いました。

「習字を続けたいなら、お母さんにお願いしなさい。そのときに、いつ勉強するのか、1日のスケジュールを作ってお母さんに見せなさい。スケジュールは、平日と、土日祝日の休みの日に分けて作りなさい」

つまり、「続けたい気持ち」を感情でぶつけるのではなく、勉強時間をきちんと確保できることを、自分で計画にして親に示しなさい、ということです。

そのとき私も先生から意見を求められましたが、「先生のおっしゃる通りしかないと思います」と答えました。35年教室にいて、これ以上の答えは思いつきません。

この出来事が教えてくれる2つのこと

1つ目は、子供にとって書道が「やらされているもの」ではないということです。

学校の勉強や塾は、どうしても「やらされている」感覚になりがちです。でも、真っ白な紙にどう筆を置くかは100%その子の自由。テストの点数や順位で評価される毎日の中で、書道は「今の自分の最高」を目指せる、数少ない自己表現の場です。「今日はハネが上手くいった」という小さな自己肯定感の積み重ねが、その子の心の安全基地になっている。だから、親に言われても手放したくないんです。

2つ目は、「やめたくない」は交渉と自己管理を学ぶチャンスになるということです。

平日と休日に分けてスケジュールを立て、親にプレゼンする。これは大人の仕事の段取りそのものです。「好きなものを、自分の計画性で守り抜く」経験は、書道の技術以上に、その子の一生の財産になります。

親御さんができる対応:「やめなさい」の前にひとつだけ

もしお子さんが「やめたくない」と言ったら、頭ごなしに決める前に、あの先生の方法を試してみてください。

「そんなに続けたいなら、いつ勉強するのか、1日のスケジュールを作って見せて。平日バージョンと、土日祝日バージョンの2つね」

これだけです。ポイントは平日と休日を分けさせること。平日は学校・塾があるので書道に使える時間は限られますが、休日は勉強と書道を両方入れる余裕があります。この違いを子供自身に発見させるのが狙いです。

スケジュールが作れたら続けさせる価値は十分ありますし、作れなかったら、それはそれで「今は難しい」と子供自身が納得する材料になります。どちらに転んでも、親が一方的に決めるより、ずっと良い結果になります。

ちなみに、書道の負担を軽くする方法は別記事に書きましたが、うちの教室では「家では練習せず、作品は教室で仕上げる」というやり方で両立している子が多いです。 →(内部リンク:書道と部活・勉強の両立は無理?先生と生徒が出した意外な答え)

続けた先にあるもの:「自分の字が好き」という一生の自信

書道が好きな子は、文字を書くこと自体の楽しさを知っています。これは大人になってPCやスマホが主流になっても変わらない強みです。

冠婚葬祭の記帳、お礼状、ちょっとしたメモ。そんなとき「自分の字が好き」と思えることは、一生続く、密かだけれど確かな自信になります。私自身、35年続けてきて、この自信に何度も助けられてきました。

まとめ

  • 子供が「書道をやめたくない」と言うのは、そこが自己表現の場・心の安全基地になっている証拠
  • やめさせる前に「1日のスケジュールを平日・休日に分けて作って見せて」と伝えてみる
  • スケジュール交渉の経験自体が、書道の技術以上の教育になる

「そんなに好きなら、どうすれば両立できるか一緒に考えようか」。その一言が、お子さんの「好き」と計画性を、同時に育ててくれますよ。

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