筆とコマンド:令和のITインフラは『SELinux』という表具で決まる?

1. 型を重んじる書道と、型を破る最新OS

私は35年、書道の世界に身を置いています。最近のお気に入りは「蘭亭序」。あの流れるような行書は、基本の型があるからこそ美しいものです。 実はITの世界でも、今まさに「大きな型の変化」が起きています。エンジニアとして、最近のRed Hat Enterprise Linux 10(RHEL 10)の動向には目を見張るものがあります。

2. SELinuxの幕開け:家の鍵、かけてますか?

今回の最新OSから、ついに「root(管理者)」という、いわば「家中のどこにでも入れるマスターキー」が初期設定で無効になりました。 これをWindowsで例えるなら、「PCを買った瞬間から、Administratorアカウントが封印されている」ような状態。これからは、個別の作業ごとに「通行許可証」が必要な時代です。

これまで、多くの現場では「面倒だから」とSELinux(セキュリティの門番)をオフにしてきました。 でも、これからの時代は「エントランスの鍵は閉まっているけど、各部屋の鍵は開けっぱなし」なんていう古いマンションのような運用は通用しません。いよいよ「SELinuxという鉄壁の表具」を整える、本物のセキュリティの幕開けです。

3. 歴史を守るか、進化を選ぶか:Altair Grid EngineとPBS Pro

私が今取り組んでいるのは、大学などの研究機関で使われる「ジョブスケジューラ」の構築。 ここで面白い対比があります。

  • Altair Grid Engine(旧SGEの流れ) 書道でいえば、古くから伝わる「古典」のような存在。でも、最新のIPv6(現代の住所体系)に対応していなかったりして、少し歴史が止まっている感があります。
  • PBS Professional 2026(最新版) こちらは現代のニーズに合わせて進化し続ける「現代書道」のようなもの。

どちらも素晴らしいのですが、困ったことに、どちらも「SELinuxを有効にしているとインストールが難しい」という、ちょっと困ったクセがあるんです。最新のOS(RHEL 10)が「鍵をかけろ」と言っているのに、動かすソフトが「鍵がかかっていると入れない」と言い出す……。この矛盾をどう美しくまとめるかが、私たちITインフラエンジニアの「腕の見せ所」なんです。

4. ツールは魔法の筆ではない

Windowsの世界では「自動化ツールを作ればOK」と思われがち。でも、書道でいい筆を使えば誰でも名筆が書けるわけではないのと同じで、ITも「元になるデータ」や「使いこなす人の論理」が伴わなければ意味がありません。

数千人の異動をツールでやるなら、そのツールのテストは誰がやるのか? データの墨色は濁っていないか? そんなことを考えながら、今日も私はサーバーの黒い画面(硯)に向かって、コマンド(筆)を走らせています。

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