「他人の3倍やれ」——逆境の暗黒期が教えてくれた、仕組みと父の言葉

インフラエンジニアとして20余年。その途上に、10数年前の「暗黒期」があります。

鳴り止まない電話、社長の的外れな誤解、そして給与未払い。あの時期を乗り越えられたのは、「仕組み化」への執念と、父がくれた一言のおかげでした。

「覚えが悪いから他人の3倍やって人並み」

差別への警告ではなく、逆境を生き抜くための武器をくれた言葉。今日は、そのことを書きます。

1. 鳴り止まない問い合わせと、デバッグ不可能なバグ

当時、私は健康保険組合向け事務処理システムの保守運用に携わっていました。法改正があれば夜11時までテストが続き、日中は操作方法を尋ねる電話が鬼のように鳴り響く。1時間待ちの折り返しが当たり前で、昼食は電話が止まるわずか20分の間に詰め込む——そんな現場でした。

さらに追い打ちをかけたのが、組織内の「デバッグ不可能なバグ」でした。

私は現場を任されていた上席のIさんを、感情的な面はあれど尊敬していました。しかし社長はなぜか、私たちが「不仲だ」と思い込んでいた。「Iの欠点と長所を言え」と繰り返し言ってくる。個人の努力や論理ではどうにもできない、組織のゆがみがそこにはありました。

現場の信頼関係を無視した的外れな誤解。エンジニアとしての正論が通用しない環境に、じわじわと消耗していきました。

2. 「有限な時間」をどう使うか。仕組みで勝負した

仕事でもプライベートでも、他人の感情や無駄な議論に「有限な時間」が奪われていく。そう感じていた私がまず手をつけたのは、本業を変えて楽することでした。

問い合わせ対応を2割効率化

膨大な操作質問を分析し、「Q&A(ナレッジベース)」として整理。よくある質問をパターン化し、質問から回答までの時間を2割削減することができました。

「仕組みを作れば、自分が消耗しなくて済む」——この実感が、その後のエンジニアキャリアの土台になっています。

💡 30代以上の方へ:現場の問題を「個人の頑張り」で解こうとするより、「仕組みで解く」発想に切り替えると、消耗の仕方が変わります。問い合わせ対応に限らず、日常業務のどこかに「パターン化できるもの」が必ず潜んでいます。

自宅での勉強を「こっそり」続けた

父の「覚えが悪いから他人の3倍やって人並み」という言葉を胸に、自宅では基本情報技術者の勉強を続けていました。職場では言えない「追いつきたい」という気持ちを、静かに行動に変えていたのです。

ストレス発散は、休みの日に美術館や旅行へ行くこと。「仕組みで効率化しながら、オフで英気を養う」——このサイクルが、私を鬱から守ってくれたと思っています。

3. 給与未払いと、父の「最適解」

会社は経営が傾き、給与の未払いが発生。私は退職を決意しました。

未払い給与の回収という課題に対し、私は「裁判を抱えながら新しい仕事を探すのは非効率だ」と判断しました。リソースを分散させない——エンジニア的な優先順位の付け方です。

そこで動いてくれたのが、父でした。

裁判という時間のかかる手段を使わず、父が直接交渉して未払い給与をすべて取り戻してくれました。後日、父はこう言いました。

「あの状況下で鬱にならなかったのが不思議だ」  ——父の言葉

美術館や旅行でストレスを発散していたと答えると、父は静かに頷きました。強さとは、感情的になることではなく、冷静に「最適解」を探し続けることだと、父の背中が教えてくれました。


※掲載の情報は2026年4月時点のものです。

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