朝晩の空気が変わり、書斎の窓から金木犀の香りが漂ってくると、なんとなく筆を執りたくなります。そんな季節が秋だと思っています。書道を始めたばかりの方にとっても、「何を書けばいいかわからない」という悩みは、意外と大きな壁になるものです。今日は、秋という季節にふさわしい漢字・言葉を10個、由来や意味とあわせてご紹介します。
■ 1. 秋(あき)
まずは、この季節そのものを表す一字からご紹介します。「秋」は禾(のぎへん)に火と書きます。稲の実りを集める時期、という意味から生まれた形声文字です。収穫の喜びと、どこかもの寂しさが同居する、この季節らしい情緒を一字で表せる、書道の定番中の定番といえるでしょう。
■ 2. 紅(くれない・べに)
紅葉の季節を象徴する一字です。秋の鮮やかな色彩の移ろいを、一文字で表現できます。「べに」と読ませれば女性らしい柔らかさが、「くれない」と読ませれば古典的な奥ゆかしさが出ます。読み方によって印象が変わるのも、この字の面白いところです。
■ 3. 月(つき)
中秋の名月、十五夜。秋の夜空に浮かぶ月ほど、日本人の情緒に寄り添う存在はありません。優しく穏やかな月の光をそのまま一字に込められる、静かな美しさを持つ文字です。
■ 4. 稲(いね・いな)
実りの秋、収穫の秋を体現する一字です。日本の田園風景そのものを思わせ、豊かさへの感謝の気持ちも込められます。画数はやや多いですが、それだけに書きごたえもあります。
■ 5. 柿(かき)
秋の実りを象徴する果物として、昔から親しまれてきた一字です。木へんに市(いち)と書くこの字は、日本の秋の風景に欠かせない存在感を持っています。
■ 6. 桐(きり)
夏の終わりから秋にかけて咲く花です。日本の伝統と縁の深い一字です。木へんの落ち着いた佇まいが、秋の静けさとよく合います。
■ 7. 望(のぞむ・ぼう)
満月を意味する字です。単に「月が満ちる」という現象だけでなく、希望や願いという意味も込められています。中秋の名月に思いを馳せながら書くのにふさわしい一字です。
■ 8. 錦秋(きんしゅう)
紅葉が錦のように美しく彩られる様子を表す熟語です。二文字ながら、秋の山々の情景がそのまま浮かんでくるような言葉で、書道では季節の作品によく使われます。
■ 9. 秋思(しゅうし)
秋にふと物思いにふける、という心情を表す言葉です。派手さはありませんが、秋という季節が持つ内省的な側面を、静かに映し出す言葉だと思います。
■ 10. 秋涼(しゅうりょう)
秋の涼やかな空気感を表す言葉です。夏の暑さが和らぎ、心地よい風が吹き始める、まさに今の時季にぴったりの言葉です。
■ まとめ
一文字でも、二文字の熟語でも、秋という季節には、それだけ豊かな言葉の世界があります。「何を書こうか」と迷ったときは、今日ご紹介した言葉の中から、その日の気分に合うものを選んでみてください。同じ「秋」という字でも、その日の心境によって、筆の運びは変わってくるはずです。
