「守りたい」という本能と、ITインフラエンジニアの鉄則。

システム構築の現場は、毎日が真剣勝負です。 昨日、Ubuntuにジョブ管理システム「PBS Pro」をインストールする作業の中で、私は技術者としての「正義感」と「組織のルール」の間で揺れる経験をしました。

1. 過去の傷跡と、技術者の本能

今回担当したお客様のサーバーは、過去に連鎖攻撃(一箇所のほころびから、ドミノ倒しに被害が広がる攻撃)を受けたという背景がありました。導入するジョブ管理システム「PBS Pro」は、標準設定では通信が暗号化されない「平文」で行われます。

「また攻撃されたら……」 「今、ここで対策をしなければ、お客様を守れない」

そんな強い危機感から、私は独断でTLS(通信の暗号化)を実装する手順をマニュアルに書き加えました。お客様が望めばいつでも鍵をかけられるように。それがプロとしての「誠実さ」だと考えたのです。

2. 「検定」か「表現」か

しかし、結果として私は上司から「指示通りにやっていない」と𠮟られました。これを聞いて、私は書道の稽古を思い出しました。

書道の「展覧会作品」であれば、自分なりの表現を追求することが許されます。例えば、お手本の「はね」が右下へ向かっていても、あえて跳ねずに上から下へ線を伸ばし、筆の力をスッと抜いて余韻を作る……。そんな「意図的なアレンジ」が個性として評価されることもあります。

けれど、段位を決める「検定課題」では、それは許されません。お手本通りに書く。まずは決められた型を再現することが求められます。

今回の私の仕事は、まさに「検定課題」でした。 「言われた通りに、正確に仕事をすること」が絶対条件であるITインフラの世界において、勝手なアレンジは美学ではなく、ただのルール違反。組織が求めていた「標準の型」を、私自身の独断が乱してしまったのです。

3. 「確認」こそが、インフラエンジニアの命

今回の失敗の原因は、明確です。 「事前の確認」という、インフラエンジニアにとって最も基本的で必須なプロセスを飛ばしてしまったこと。

たとえ技術的に正しくても、たとえお客様を想ってのことであっても、チームで動く以上、独断行動は許されません。 「こうしたい」という情熱があるのなら、それをまず「確認」という形でお客様やチームに提示し、合意を得る。そのステップこそが、本当の「誠実さ」だったのだと痛感しました。

4. 失敗は、より強固なプロになるための糧

「自分の作品のダメな点を自分で言いなさい」 先生の言葉を思い出しながら、自分の「甘さ」を反省しています。

今は温かい紅茶を飲みながら、この経験を血肉に変えていきます。「守りたい」という私の想いは、次は勝手な実装ではなく、正式な「提案」と「確認」という形でお客様に届けたい。

明日の朝、この学びを胸に、今日よりももっと信頼される「構図」を描けるエンジニアを目指して、一歩ずつ進んでいこうと思います。

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